氷の華

「はい、はい、百七十万ほどです。分かりました。」


事務的なやりとりを聞きながら、定位置となった窓に視点を合わせた。


借金が横滑りしただけだったけど、こうして外に出るのは良い気分転換にはなった。


暖かいこのシートとも、重苦しい沈黙が支配するこの空間とも、もうバイバイだね。


「蘭さん、これから店で着るドレスを見に行く事になりました。」


変わらず平板な口調で語った柿沢店長の声が、一瞬だけ私の反応を遅らせる。


「え?そんなの良いですよ。店で貸してくれるドレスを着るつもりでしたし…。」


それに、お金が無いからと言おうとしたけど、敢えて言葉には出さなかった。