氷の華

緊張する素振りなんて一つも見せなかったけど、柿沢店長も内心は緊張していたのかな。


私の代わりに、淡々と精算していく柿沢店長の姿。


必要な事以外は話そうとせず、黙々と車を運転している姿。


その中に緊張している様を隠しているのかな、なんて思うと何処か可笑しかった。


氷藤社長までとはいかなくても、勝手に氷の人形なんてイメージを持っていた柿沢店長にも、人間らしさが有ったんだ。


変わらず重い沈黙が続く車内に、機械的な電子音が鳴り響いたのは、私がそんな事を思っていた時だった。


車を路肩に停め、コートのポケットから携帯を取り出した柿沢店長は、誰かと話し始めた。


敬語での報告口調だったから、恐らく相手は氷藤社長だ。