「…分かり、ました。」


一気に言い切る事が出来ない自分に、内心では苦笑いだった。


「それでは行きましょうか。」


それから、何事も無かったかのように発進させた柿沢店長は、私の言うとおりに車を走らせた。


ママの入院費が残っている病院、銀行、小口融資専門の町の金融機関と、全てを回り終えた頃には午後も三時を過ぎ、吹く風の温度も少し下がったように感じた。


それまで後ろの座席に置かれていた、ゼロハリバートンのスリムラインスーツケースに、帯で止められた現金が入れられているのを見た時は、正直驚きを隠せなかった。


これなら、私を迎えにきても直ぐに車に戻って行った、柿沢店長の動きにも納得出来る。


借りてきた車に預かってきた大金なんて、私が柿沢店長なら緊張して息をするのも苦しくなるだろう。