私が大声を上げても、柿沢店長は動じる事無く車を路肩に停車させた。


車に傷の一つでも残してやりたいけど、今はそんな事よりも早く車を降りたかった。


働き口なんて、他のお店を探せば良いんだ。


ドアを開けて車を降りようとした私の腕が、何かに引っかかったように動いてくれない。


「離して下さい!そんな哀れみに納得なんて、私には出来ませんから。」


「ご心配なく、その点に関しては私も納得出来ていませんから。」


なんとか食い下がろうと、私を説得するのかと思っていたのに、想像もつかなかった言葉を吐かれて、暫しの間呆気にとられた。


─自分は氷藤社長に拾われた人間ですから──


昨日、社長室に向かう前に、柿沢店長は確かにそう言った。