「何をですか？」


「ウチが蘭さんの借金を、一時肩代わりする事ですよ。正確には、ウチがと言うより社長がそう仰られたんです。」


柿沢店長の平板な口調は、感情が込められていない分、他者には伝わり辛い。


語られた言葉を必死で理解しようとしたけど、今度ははっきりと怒りしか浮かんでこなかった。


「そんな事聞いてませんし、そんなつもりで話したんじゃありません！車を停めて下さい、私帰りますから。」


氷藤社長が幾らお金を持っているとしても、人の事情に口を突っ込む権利なんて無いよ。


借金を背負った私をバカにしてるか、哀れんでるとしか思えない。


人間性を好きにはなれそうもないとは思っていたけど、今は氷藤社長に確かな嫌悪感を抱いてる。