何かを許されたかのように顔を上げた柿沢店長に合わせ、私もゆっくりと顔を上げる。


初めて目の当たりにした氷藤社長。


何故か、視線を外せない自分が居た。


それはまるで、二人の間に漂う空気が、流れる時が、止まってしまったかのように思えるほど…。


「…社長?」


沈黙の水面に小石を投げたのは、柿沢店長だった。


波紋が広がるにつれ、意識が自分の中に戻ってくる。


氷藤社長とは初めて会った筈なのに、何故か初めてという気がしない…。