「愛と恋には、進んでフリー客を付けるな。」


最後に吸ったマルボロが、チリチリと乾いた音を立てた。


「何故です?愛と恋のどちらかは、ナンバー5を指定席にするかもしれませんよ?」


スクエアなガラス製の灰皿にマルボロを捨て、不思議そうな柿崎に顔を向ける。


「勘違いするな。お前の意見は求めてない。二人の動向は逐一報告しろ。」


ストレートに言葉を吐いた自分を責めながら、柿沢は頭を下げた。


「すいませんでした。」


頭を上げた柿沢を手で払って業務に戻し、ハイバックチェアに身体を預け、瞑想するように瞼を閉じた…。