氷の華

「では、ミーティングを始めます。」


柴山が取り仕切るはずのミーティングを柿沢が始めた事により、キャスト達の中に微かな響めきが起こった。


それを背中で聞き、ドアノブに手をかけた社長室のドアに背中を預けた。


キャストの脇に並ぶホールスタッフの中には、苦々しげな顔をした柴山が柿沢を睨んでいる。


キャスト達はそれを敏感に感じ取り、降格させられた柴山に好奇の視線を注いでいた。


それ等を無視しながら、柿沢は報告事項や注意事項を織り交ぜたミーティングを始めた。


「皆さんにとっては大勢居る中の指名客ですが、指名客にとっての指名キャストは一人だけです。一人一人の接客を疎かにしないよう気を付け、ホールスタッフも全力でバックアップしますので、本日も頑張っていきましょう。」


柿沢の淡々としたミーティングの様子を見る限り、昇格が重荷とはなっていないようだ。