「蘭さんも野田さんがお待ちですから、落ち着いたら直ぐホールに戻って下さいね。」


笑みを携えた柿沢店長に言われたけど、乃亜さんと対峙していた時は冷たい表情を見せていたはず。


言葉は出てくれず、私はロッカールームを出ていく柿沢店長の背中に頷きを返した。


ドアが閉じられると同時に、疲れが両肩にのし掛かる。


思わず溜め息を吐こうとしていると、閉じられたドアが直ぐ様開き流亜さんが姿を現した。


「宮口さんてあれよね？坂本さんの会社の人でしょ？私にまで迷惑はかけないようにしてよね。」


そう言った次の瞬間には、流亜さんの姿は消えていた。


乃亜さんの姑息な手口といい、流亜さんの冷たく突き放すような言葉といい、華やかな世界の裏側を垣間見た気がした…。