氷の華

宙に止めていたグラスを口に運び、渋々と言った表情の宮口さんが煙草をくわえた。


賺さず取り出したライターの火を、煙草の先に翳した。


「…本当に、ちょっとだけなら。」


「宮口さん有り難う。じゃあ、早く帰ってこれるように早く行ってきます。」


造花の笑顔を見せ、仕方ないと頷いてくれた宮口さんのテーブルから離れた。


「蘭さん、次回からはもう少し早くテーブルを移動して下さいね。」


すれ違いざま、伊藤君に言われた言葉に温度は無く、ハッとしたように私はその背中を目で追った。


仕事を与えられただけで、人間とは顔つきや雰囲気まで変わってしまうのだろうかと思いながら。