氷の華

「…分かりました。」


前回よりも早い時間の野田さんの来店に、初めて指名がかぶってしまった動揺は隠せなかった。


去って行く伊藤君の背中から視線をテーブルに戻す間に、表情を作り替えた。


「宮口さんごめんなさい。ちょっと他のテーブルにも行かなくちゃいけなくなっちゃって…。」


そう言いながら両手を顔の前で合わせた私に、口元に運びかけていたグラスを止めて宮口さんが振り向いた。


明白に不愉快そうな表情。


でも、それも当然といえば当然。


私とこうやってお酒を呑む為に来店されてるのだから、不愉快な思いになるのも仕方ない。