氷の華

そっか、恋さんも知らないんだ。


「蘭さん、十二番テーブルに顔見せお願いします。」


待機用のテーブルに現れた柿沢店長の姿に、返事をして席を立った。


「あの、氷藤社長はどうかされたんですか?」


私の声に立ち止まり、柿沢店長は振り返った。


「いえ、何もありませんよ。今日から伊藤を付け回しにしますから、何かあったら伊藤に言って下さいね。」


「そうですか…分かりました。」


言い終わると、柿沢店長は用事が済んだというように社長室へと歩いていった。


その場に立ち止まったままの、私の胸に残る違和感の正体は何なのだろう…。