莉沙が言いたかったのは、蘭の借金を肩代わりした事に違いなかった。


「それがどうした。」


燻る煙とマッカランの芳醇な香りが、互いに交わりながら鼻腔から抜けていく。


「相手が私でもそうした?」


艶っぽさを無くした莉沙の挑発的な瞳には、的外れな嫉妬の色がありありと浮かんでいる。


「状況如何によっては、そうしただろうな。」


「嘘ね。これまで華の一本も買ってくれた事の無い貴男が、私にそんな事してくれるはずがないわ。」


莉沙は断定的な言い方をしたが、嘘ではない。


キャストとしての莉沙を見れば、蘭と同額以上の金を出しても惜しくはない。


店を辞められるよりはずっとマシだが、これから先があるキャストと、あとは落ちるだけしかないキャストとして、一考はするだろう。


だが、キャストとしてよりも、女としての考えが勝っている今の莉沙には、何を言っても無駄だと思っていた。


「キャストは自分にお金を運んでくれる道具ぐらいにしか思っていない貴男が、実績もない新人の彼女にお金を出すなんて、何かしらの感情があるとしか考えられないわ。」