含み笑いが漏れ、静かな社長室に響いた。


「どうかされましたか?」


怪訝そうに訪ねてくる柿沢に、なんでもないと軽く手を振った。


灰皿で灰を白く伸ばしたマルボロを取り、燃え尽きた分を指で軽く落とす。


莉沙が蘭を付けた事に何の違和感も持たない柿沢は、桃城と比べるとやはり未だ若い。


ついさっき[fairyland]に顔を出してきただけに、余計そう思う。


尤も、そうでなければ、文字通り柴山に足を掬われる事もなかったと思うが。


だがなんにしても、新店舗を任せられるような人材は、系列店を見渡しても柿沢以外の適任者が居ないのも事実。


新店舗オープンには、若さの持つ勢いと独創性が必要不可欠と言う事がその理由だった。