「此処は大丈夫ですので、蘭さんは十二番テーブルにお願いします。」


柿沢店長は私にそう言うと、再びグラスの破片を拾い始めた。


それを見つめていた柴山マネージャーは、不満そうに鼻を鳴らして厨房の奥に歩いていった。


一瞬でも期待を込めて、氷藤社長に助けを求めるような視線を向けた自分が愚かだったのだろうか…。


─私はキャストの皆さんと歳が近いですから、役職との板挟み──


昨日、そう言っていた柿沢店長の言葉を思い出す。


あれはきっと、キャストに対してだけじゃなかったんだ。


ホールスタッフに対しての言葉でもあったのだと、私は今頃になって気付いていた。


柴山マネージャーとは、親子ほども歳が離れているから言い辛いのだろうと…。