柿沢店長の後ろを付いていくと、柴山マネージャーが厨房の前で意地悪そうな笑みをしていた。


店内の様子を眺めながら歩いている柿沢店長は、柴山マネージャーの存在に気付いてないみたい。


柴山マネージャーの存在に気付かないまま、その前を通ろうとした柿沢店長は、大きな音を立てて転んでしまった。


咄嗟に何かを掴もうとした柿沢店長が、グラスを乗せたトレイを床で割ってしまった音だ。


「申し訳ありません。」


一歩前へ出てお客様に頭を下げた柴山マネージャーは、何事かと振り返ったお客様が視線を戻すと、そのままの体勢で柿沢店長に冷たい視線を送っていた。


立ち上がった柿沢店長も、お客様に向かって失礼しましたと頭を下げたけど、後ろを歩いていた私には全てが見えている。


柴山マネージャーが、素知らぬ顔で足を出した瞬間を…。