氷の華

ノータイで黒いスーツを着こなし、黒縁の眼鏡をかけた若い男性客。


隣で優雅そうにしている女性は、この間ゴールドのドレスを着ていたキャストだ。


男性客を柿沢店長に任せたその人は、大人な雰囲気を纏いながら此方に向かって歩いてくる。


待機用のテーブルに居る私と目が合ったかと思うと、ロッカールームに消えていった。


黒のロングコートが凄く似合っていて、思わず綺麗と呟いている私が居た。


付けている香水の甘い匂いが、長い尾のように漂っている。


同性の私でも見惚れてしまう容姿は、氷藤社長に向けたものとは違う種類の溜め息を生み出した。


その女性の後を追うように、流亜さんもロッカールームに入っていった。