氷の華

トイレからホールに出ると、柔らかく落とされた照明の光が、気持ちを落ち着かせてくれるように感じる。


店内を見渡してみると、既に別の指名客に付いている流亜さんが居た。


そこに、さっきトイレで見せたような、卑しい表情は微塵もない。


甘え上手で可愛らしく、小柄な体型と合う無邪気さを感じさせる笑顔。


切り替えの早さは私も見習おうと思いながら、待機用のテーブルに向かって歩き出した。


足音を吸い込む深紅のカーペット。


この上を歩いているだけで、自分が舞台にでも立っているような気分になる。


こういった[ミルキィ]の演出全てが、氷藤社長によって計算し尽くされたものかと思うと、自然に溜め息が漏れていた。