氷の華

何も言わず廊下を歩き進んでいく柿沢店長の背中を、不思議な顔で見つめていた。


何か説明くらいしてくれても良いと思うけど。


それとも、その説明を無駄だと判断しているから、柿沢店長は何も話さないのだろうか。


もしかして、此処が柿沢店長の家だったりして。


私のアパートと比べると、物凄く豪華なマンションだけど、店長クラスの人ならこのくらいのマンションに住んでいても不思議じゃないと思う。


でもそうだとしたら、なんの為に私を連れてきたのだろう…。


あれこれと頭の中で憶測が飛び交っていたけど、結局その答えは出ず仕舞いのまま、廊下の一番奥まで着いてしまった。


鍵を取り出してドアに差し込む柿沢店長の姿を、私はただただ目で追っていた。