氷の華

車を運転する柿沢店長を見ていると、なんだか最初から仕組まれていた気がする。


お店側にとって一番困るのは、キャストに辞められる事。


尤もそれは、それなりに実績を積んでいるキャストの場合だけど。


その切り札を、借金の横滑りで私は失ってしまったんだ。


そう思うと、無表情で運転している柿沢店長にも、まんまとやりこめられていたのだと思わざるを得ない。


─私もその件に関しては納得出来ていませんから──


未だ切り札を持っていた私には、同調したと思わせて利点を織り交ぜながら諭して、切り札を無くした私には、出来ないと分かっていて氷藤社長への直談判を促す。


冷徹だ冷血だと言われる氷藤社長の下で、伊達にこの若さで店長のポストに居る訳じゃないのだと思わされた。