「まあまあ、琉七落ち着いて。
せっかく琉衣も琉羽もこう言ってるんだしさ」
父もゆっくりと母に微笑む。
「あなた...」
「せっかくだからさ、楽しんできてよ!
10回目の結婚記念日!」
「...まったく、もう...」
半ば呆れながらも、母は穏やかに目を細めた。
大きくなるのもあっという間ね。
前は私達がいないと大泣きしてたのに...と
子供たちの成長に心を躍らせていた。
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「じゃあ行くわよ?」
父と母は2日分の衣類などが入ったトランクを
それぞれ抱えて、玄関で2人のわが子をふりかえる。
「うん。気をつけてね!」
「あなたたちも、戸締りをしっかりするのよ」
「わかってるって」
「ご飯は冷蔵庫に入ってるからチンしてね」
「はーい」
「あと、10時までには寝ること」
「はいはい。わかったから。」
「それから...」
「お母さん、わかってるって。
そんなに心配してたら旅行楽しめないよ」
「そうだよ。僕達は、ちゃんとやれるから」

