琉衣はいつもの如く早く目を覚ました。


時間は朝の6時。


外はまだ雨が降っているため薄暗い。


雷こそ鳴ってはいないし、昨日の台風は去ったらしいが


また今日の昼あたりこの辺の地域にかかるらしい。





宿題を一昨日のうちに早々と終わらせた琉衣は


暇だったのか1度振り返り琉羽を見ると


ベッドから抜けてパジャマのままテレビを付けた。



特別テレビが見たかったわけじゃなかったから


ただぼーっと天気予報のZAP!を眺める。



「お母さんたち帰ってくるの3時頃だっけな。

おばあちゃん家から帰る間に

……事故とか無ければいいな……」



実は、父も母も異国の血を引いていて

父はクォーターで母はハーフなのである。


父は日本生まれ日本育ちのためか、

別に特段外国語が喋れるわけでもない。


しかし母が生まれてすぐに

日本人である、母のお父さん(つまり琉衣と琉羽の祖父)

は亡くなってしまったので母は、

フランス人の母の元で育ったのだ。



「……」



雨は止むことなく降り続ける。


雨の音というのはどこか安らぐような音色だが、

今日だけは何故か嫌な風に聞こえてくる。


天気予報では、今日は一日雨だ。


朝日が差し込まない薄暗い天気では

そうそう琉羽は起きてこないだろう。


もともと朝は弱いから尚更だが。




「……」



ふいに、琉衣は立ち上がった。

受話器の前に立って

頭の中に記憶している番号を打ち込んでいく。



最後までうち終わって発信ボタンを押そうとしたが

はた、と動きを止めた。


瞳の中で密かに揺れ動くものがあった。



「……やっぱり…」



琉衣は受話器を持つ手から、そっと力を抜く。



「僕は…僕の欲しいものは………」



くらっと、体の力が抜けそうになって


ふらりふらりと後退する。


体はまだ電話の方を向いたまま。


後ろで、ゆっくりとドアのあく気配がした。



「……琉衣、なにしてるの?」