となりを埋めて。

「光祐…キスして。」

私は慌て踏み台から飛び降りた。


でも部屋には戻れない。


網戸の音、したら気づかれる。


膝を抱えた。


なんで、マナミがこんなところにいるの?
ここは私とコウちゃんの場所だよ。


階段下も、ボロの駐輪場の影も。

2年くらい前にコウちゃんがハマって、よく、秘密基地ごっこをした。


まだ、一年生の頃、お母さんの帰りをベランダからのぞいて待っていたとき、コウちゃんが「食えよ」ってむぎチョコの袋をひとつ、投げてくれた。

私は、思い出して何故か涙が出た。

ポケットから今日の帰りに駄菓子屋さんで買ったむぎチョコを出した。


ひとつ食べた。



なんだか、もう、元気になれそうになかった。