一度手を上げて、ヒロはスタスタと歩いていく。




照れた顔、もうちょっと見たかったなあ…。


なんて、名残惜しくその背中を見つめる。




ヒロが扉に手をかけたのが見えて。


私も飲み物を買って戻ろう。


そう思い、後ろを向いて歩き出そうとした。








そのとき。




くるりと振り返ったヒロ。


その顔は、もう赤い顔なんてしていなくて。




びっくりしている私に向かって叫ぶ。












「カナ、見てろよ!」












眩しいほどの笑顔は。




その背中とともに、すぐに扉の向こうに消えた。












取り残された私は、どうすればいいのか。




そんなの、ずるすぎるでしょう。








私は足の力が抜けて、その場にぺたりと座り込んで。








「もう……バカ…っ…!」








もう見えなくなった背中に向かって叫んだ。