恋をする、その先に…


しかしナツメからは返事がなく
それどころか。



「…さっき言ってた
 前の秘書の事だけど…」



代わりに質問が返ってきた。



「誰から聞いたんだ?」


「誰って…
 さっきの飲み会の席で
 職場の人達が言ってたんだよ」



ヒメが答えると
なぜかナツメは考え込む。

その姿に
違和感を感じた。



「まぁ、あんまり気にすんな。
 お前はお前だ。
 俺が認めた立派な秘書なんだし」



違和感は感じたが
そう言われてしまうと
素直に嬉しく思えた。

単純なんだと思う。


しかし
何よりも誰よりも
認めてもらえた事が
自分の存在価値を
肯定してもらえた気がしたから。



「誰に何を吹き込まれたか知らんけど
 ヤケ酒禁止。
 お前の飲み方は恐ろしい」


「わかってるけど…
 飲みたくもなる…」



眠気に襲われ
虚ろに返事をすると
ナツメは
『ったく、風邪をひく』と
呆れながらも
足元の掛布団を持ち
ヒメにそっと掛けた。



静かな部屋に
小さく聞こえる
ヒメの寝息。


その寝顔を見つめていると
欲を掻き立てられた。



――ふと、枕元に手を置き
 ヒメの顔に近付いた――



「あんまり無防備だと
 危ねぇぞ…」



耳元で囁き
それ以上は何もせず
ヒメから離れると
そのまま部屋を出て行った。



もちろん当本人は
そんな事をされていたとは
夢にも思っていなかったが。