「ナツメ~
 頼まれてた資料が出来たよ」



ノックもなしに
突然、社長室に入ってくるシキ。



「お前なー」



『ノックをしろ』と
もはや注意するのも面倒になったのか
ナツメは溜め息だけ吐き
言葉に出す事をやめた。



「ヒ~メちゃん。
 今夜こそ、俺のデートの誘いを受けてよ」


「はいはい
 今度ね」



『あいかわらずナンパ好きだなぁ』と
呆れながら軽く流すが。



「俺、ヒメちゃんと行きたいの。
 コレ結構本気」



そう言うシキは
まっすぐヒメを直視。
そんな事をされると
逆に困ってしまうというか
恥ずかしいというかで
非常に複雑な心境になる。



(女好きっぽかったのに
 いきなりマジメになると調子狂うなぁ)



シキに何があったのかわからないが
最近こんな調子なのだ。



「仕事中に
 人の部屋でナンパするな
 それも俺の秘書に」


「はいはい。了解です。
 あッ!そうだ思い出した!!」



ふと何かを思い出したのか
シキは興奮気味に声が大きくなる。

何を言おうとしているのか
まだ何も聞いていないのに
ナツメは密かに
『ロクな事じゃねぇだろうな』と
イヤな予感はしていた。