「今のって
 社長の新しい秘書でしょ?」


「えー、あの人が?
 冴えない感じだけど
 秘書にふさわしい~?」


「なんかムカツクよねー」



『聞こえてる、聞こえてる。
丸ごと全部筒抜けなんすけどー』と
不快に思いながらも無視。


いちいち個々の好みに振り回されて
気持ちの浮き沈みをしていても
仕方ない。



「女性社員に認められる日は
 程遠そうだな」



若干、諦めながら
与えられた仕事をこなす。


一般職員と秘書は
どうしても溝が出来るモノだ。



しばらく忙しい日々は続いたが
ようやく落ち着いたのは
それから2週間後の事―――



「よし。結構終わったな」


「うん。あとは副社長から資料をもらって
目を通したら終わり」


「バタバタしてたけど
そういえば
 マンションは慣れたか?」



ヒメの事を気に掛けていたナツメに
新しい住まいについて聞かれ



「いやー…まだ慣れないよ。
 部屋が広すぎて緊張するし…」



と、言いつつ
実は1番緊張するのは
他の理由。



それは
両サイドが
ナツメとシキの部屋に
挟まれているという事。



「男に挟まれてイヤかもしれねぇけど
 俺の部屋の階ならセキュリティが万全だからな」



軽ノリのシキが隣に住んでいるのは
セキュリティも役に立てない気がしたが
安心・安全が保障されているため
外部からの恐怖は感じなくなった。