「こういう案件は
 証拠がないと警察も動けないのは
 知っていたからな。
 社長の特権を使って
 強制的に動かした」


「…なるほど」



“社長の特権”
なんと便利な力だろうか。


SPのいるのだから
バックに警察がいてもおかしくない。


“社長のSOS”で
早急に働く事はわかっていたのだ。



「…とは言え
 間に合わなくて悪かった。
 部屋の荒らされ方と
 窓周辺の血まみれは
 地獄絵図すぎ」


「だろうね。
 まさに衝撃映像。
 殺人現場にならなくて良かったけど」



なんて呑気に笑うヒメに
『笑えねぇ冗談はカンベンしてくれ』と
困った顔をするナツメ。



「そうだ。
 引っ越しはどうする?」


「あの部屋には
 戻りたくないからね。
 社長の言葉に甘えて
 引っ越しさせてもらおうかな」


「了解。
 それなら手続きはしておく。
 退院したら引っ越しな」



ナツメ達が住む高級マンションに
さすがに家賃を全額
社長が払ってもらうワケにはいかず
給料から半分天引きという形で
引っ越しが完了した。




あの事件は無事に解決し
何事もなかったかのように
穏やかな時間が過ぎた―――