「まさか朝から
部屋を物色してるとは思わなかった。
完全に油断した…」
後悔を拭い去れないシキは
男を殴って腫れた手で
拳を握った。
「それで取り乱して
あんなに殴ったのか。
お前にしては珍しいな」
「ナツメが俺の立場なら
…どうした?」
ポツリと
そう問い掛けたシキに
ナツメは一言だけ答えた。
「同じ事をした」
…と。
―――その後ヒメは
数日の入院となった。
背中の打撲と
全身に浴びたガラスで
ケガした箇所は多く
その手当と
念のために頭部のCTを撮るなど
精密検査も行ったためだ。
幸い、どの結果も異常はなく
後遺症も残らないで済んだ。
ストーカー男はと言うと
不法侵入と暴力・傷害の他に
なんとヒメ以外にも余罪があり
罪は重い。
「え、警察の人って
社長の知り合いだったの!?」
病室のベッドで
見舞いに来たナツメから
思わぬ事実を告げられたのだ。
「そ。前もって連絡していて
あの日は男の生活や行動を
調査する予定だったんだ。
けれど
すでに事件が起きていたとはな…」
ナツメの部屋を泊まった日の翌朝
『別件で用事がある』と
1人でどこかに行ってしまったのは
そういう事だったのだと納得。


