「まさかヒメちゃん…
 自分の事より
 俺の心配したの…?」


「当たり前だよ。
 あの男、凶器持ってたし
 “もしも”の事を考えたら
 ゾッとする。
 叫ぶ事しか出来なかったんだけどね」


「ヒメちゃん…」



被害が大きかったのはヒメなのに
そんな事はお構いなく
あまりのタフな根性に
ナツメも、そして特にシキは
ただ圧倒されるばかりだった。



「シキは強いって言ったよな?
 こいつ、柔道黒帯だから
 心配しなくても
 護身術は身に着けているんだ」


「え、そうなの!?」


「信じてなかったのか…」



『はぁ…』と
呆れて溜め息が零れるナツメに
『確かに見つけた時は
見事に捕まえてたな』と
思い出して苦笑い。



そんなヒメとナツメのやり取りを
黙って見ていたシキは、突然…



「ヒメちゃん」


「え…」



ヒメを抱きしめた。



「なッ…」



驚くヒメに
無言のナツメ。



「頼むから
 もう無茶はしないで」


「副社長…」


「流血は焦る。
俺の方が心臓に悪い」


「うん…ごめん」



しばらく抱擁し
救急車が到着すると
ヒメは担架に乗せられ
救急隊へと引き渡された。


残った2人は
犯行現場の部屋を見渡し愕然。