そして突然…



「ボクの気持ちを…」



聞こえるか聞こえないかの
か細い声で何かを呟いたかと思うと…



「うわぁぁあぁぁあぁあぁぁ!」



大声で発狂し
ヒメに突進してきた。



「えッ」



驚いたのも束の間
次の瞬間
男はヒメを
思い切り窓に突き飛ばした。



部屋中に
ガシャンと大きな音が響き渡る―――



「ボクの気持ちをッ
 ボクの気持ちをッッ」



間髪入れずに
男はヒメを何度も窓に押し付けながら
同じ言葉を繰り返す。



ヒメが恐怖と痛みで
身体の力が抜け始めると
男はハッと我に返り
自分が何をしたのか思い返し
小刻みに震えながら
ようやく解放してくれた。



「…ッ」



ヒメは床にドサッと崩れ落ち
まわりに散らばるガラスの破片と
ポタポタと
どこからか流れる血液を見つめながら
今自分がどういう状況なのか
把握するのに時間を要した。



「ヒメちゃん!?」



大きな音に気が付いたシキが
玄関から声を掛け
男がシキの存在に気付いてしまった。



“副社長の身が危険”
そう感じたヒメは
自分の事は後回しに
大声で叫んだ。



「逃げて!
 副社長ッ!!」