恋をする、その先に…


本当に
この男で間違いない。


今までの行動は
男が発した発言で
確実なモノとなり
恐怖と気持ちの悪さに
打ちひしがれた。



「どうしてアタシなんですか…」



そもそも
この男がココに引っ越してきてから
ほとんど話をした事がないし
顔すら合わせる事がなかったのに
どのタイミングで
どうして自分なのか
疑問しかない。



「一目惚れなんだよ。
ボクのタイプの若いコが
 隣に住んでいるんだよ?
 嬉しいに決まっているだろ?」


「え…それだけで?」



男の言葉に耳を疑ってしまった。



通常ストーカーとは
“優しくされた”や
“笑顔を向けてくれた”など
何らかの縁やキッカケで
始まるんだろうという概念を
持っていたから。



しかし
そういう人間ばかりではないんだと
今初めて痛感させられている。



「隣で毎日どんな生活をしているのか
 何をしているのか
 ずっと気になって
 壁からキミの声を聞くのが
 幸せなんだよ」



鼻息を荒くしながら熱弁する男に
鳥肌が立つ。
同時に
全身から冷や汗が出てくる。


“今すぐココから逃げないと”
そう思っているのに
足が動かない。
まるで金縛りのようだ。