「裏にまわせ」


「あ、はい」



意味深な指示をすると
運転手はすぐに理解。


車が走り出した。



目的地を知らないヒメが質問する前に
思いがけないところから
行き先の答えが返ってきた。



「俺らのマンションに向かってんの?」



その相手がシキ。


“俺らのマンション”とは
会社のすぐ隣に位置する
ナツメとシキが住む高級マンションの事。



「神崎、今日は俺の部屋に泊まれ」


「…へ?」



突然の思いがけないナツメの爆弾発言に
ヒメはもちろん
シキはそれ以上に驚いた。



「何言ってんの!?
 なんでナツメの部屋に泊めんの!?」


「セキュリティとSPは完備しているし
 ビジネスホテルより安全だから。
 対策は出来るだろ」


「あー…そういう事ね」



“ストーカー対策”だと
さらっと言われてしまい納得。



「白昼堂々と大胆な発表で
何するのかと思った。
ナツメはいつも言葉が少ないから
弟の俺でさえ誤解を招くんですけど」



確かにナツメの
『俺の部屋に泊まれ』の
大型爆弾級の発言は
まわりを困惑させる。


本人はもちろん気付いてはいないが。