「どうかしたんですか…?」
なんとなくだが
イヤな予感が頭を過る。
『先ほど男性が
神崎秘書を尋ねていらっしゃったんですが…
【神崎ヒメという方は働いていますか?】と
聞かれましたので
どちら様かと聞き返しましたら
何も答えられず
すぐに出ていってしまわれたんです』
「男性の来客…?」
心当たりのない来客。
今日はそんな約束はしていないし
そもそも相手の聞き方がおかしいと
違和感を感じた。
『“尋ねて来た”というより
“捜していた”と言ったほうがいいですかね…。
お知り合いという感じではなかったように
お見受けしましたが…』
ヒメ同様
受付職員も同じ事を察していた。
それほど
“怪しい”人物だったのだろうか。
「まだその人は近くにいますか?」
『いえ…
見る限り
姿は拝見出来ないです』
「ありがとうございます。
ひとまず下に行きますね」
頭に過るイヤな予感は
“ストーカー”の存在。
手紙からして
会社を突き止めようとしていても
おかしくない。
上昇する心拍数を落ち着かせながら
1階へと降りると
すぐに受付職員もヒメに気付き
駆け寄ってきた。


