神経質になっているのか
誰かに後を付けられているような感覚に襲われ
足早に会社に向かう。
見られているんじゃないかと
視線さえ感じていた。
「こんな事に振り回されるなんてイヤ。
解放されたい」
辺りを気にしながら
逃げるように会社へと到着。
後ろを気にしつつ
急ぎ足でエレベーターに乗り込んだ。
「ヒメちゃ~ん!
おはよ~」
秘書室の階に進むと
もうすでに到着していたシキの
目障りなほどの
明るく元気な呼び声が聞こえてきた。
「あ、副社長
おはようございます」
「そんな堅苦しくしなくても
“シキ”って呼んでって
言ったっしょ?」
さも、前から約束したような口ぶりだが
そんな事は聞いた事がないし
約束した覚えもない。
そしてさすがに
副社長を名前で呼ぶ勇気もないし
そんな身分でもないので
気が引けた。
「今朝は早いですね」
「まぁね。
ナツメも一緒だけど
アイツと違って俺は夜型だから
朝は苦手。
今朝は見事に寝坊して
ただいま遅刻中~」
「そんな悠長な…」
満面な笑みで
嬉しそうなシキだが
遅刻はダメだろうと
呆れ気味なヒメ。


