「酔っ払っててフラフラしてたから
 介抱してあげただけですよ~」



と、白々しい嘘を吐く男。



「酔っ払っててフラフラねぇ」



何かを言いたそうにヒメを見つける若社長。



「…何」



文句でもあるのかと
助けてくれるはずの男に
怪訝な顔を向けた。



「まぁなんでもいいけど
 いい歳して恥ずかしいから
 もうやめといたらどうです?
 それともまだ何か言いたいなら
 直接警察にどうぞ」



そう言いながら
若者著は携帯で“110”を押し
男達に見せつけると
バツが悪くなったのか
それ以上は何も言わずに
その場から去っていった。


喧嘩沙汰な大事には至らず
無事に回避出来たのは
この男に冷静な大人お対応があったからなんだろう。



「…ありがとうございます」



『助けてくれて』と
小声で付け足すが
あいかわらず表情を変えない男。



「隙を作ると
 今みたいなのが寄ってくるよ」


「…はあ」



隙を作ったワケではなかっただけに
思わず間抜けな声で返事をしてしまった。


しかしそれ以上は話題が続くはずもなく
終始無言のまま若社長の後ろをついていく形で
席に戻ると…