男相手に逃げ切れる自信はないし
捕まれば殺されるという恐ろしさに
尻込みしそうになる。



足音が聞こえてくる方向から
目を離せずにいると
階段を上がりきった先に
その人物の姿が現れた。



「神崎…?」


「…社長…」



足音の正体は
“謎の男”ではなく
ナツメだった。



「よ…かった…」


「え、神崎!?」



腰が抜けたヒメは
ガクッと膝から崩れ落ち
その場に座り込んでしまい
その姿を見たナツメは
慌てて彼女の元へと駆け寄った。



「どうした!?
 大丈夫か!?」


「平気、平気」



ヒメは安堵の表情を浮かべた。



「鍵を車に置いていったから
 入れないと思って持ってきたけど…
 そんなに驚かせたか?」


「幽霊…的なのかと思って」


「…は?」



必死に誤魔化した結果
ナツメは気が抜けたらしく
呆れた表情を浮かべている。



『確かにそういう反応するよなぁ』と
理解ながら
ヒメはナツメの肩を借りて立ち上がった。



「幽霊って
 子供かよ」


「怖いモンは
 何歳になっても怖いモンです」


「はいはい。
 それならいいか…。
 戸締りして早く寝ろよ?」


「ありがとう。
 心配掛けてごめんね」



ストーカー男の事に
慎重になりすぎていると
頭を切り替える事にした。