「!?」
声にならない言葉を発し
怖くなって後ろを振り返るが
誰もいない。
この感覚を…
前にも知っている。
扉の前で感じた気配と
まったく同じなのだ。
“見られている”
どこからかなんて見当もつかないが
人に見られている気配だというのは
確信していた。
酔っているはずなのに
それを上回るほどの恐怖に怯え
“ココから離れたい”と
体中が叫んでいる。
震える足で
ようやく自室に辿り着き
震える手で
逸る気持ちを落ち着かせながら
鞄に入っている鍵を探す。
しかし
こんなときに限って
鍵は見つからない。
「最悪。
どこかに落としたかな」
こういうときの悪運に
自分を呪いながら
鍵を探すべく
来たところに引き返そうと
Uターンした。
すると…
カツ…
カツ……
カツ………
廊下を上がってくる
靴の音が響いて聞こえてきた。
このタイミングで
頭に過る人物が
自分を見ている“謎の男”だと
それしかありえないと
恐怖で後ずさりする。
「いやだ…
来るな…」
姿はまだ見えていないのに
心拍数は上昇し
反射的に逃げる準備が始まる。


