恋をする、その先に…


「前も思ったけど
 すげぇ飲むのな。
 通常ペースなワケ?」



ナツメは
ゆっくりとした配分で
ハイボールを飲みながら
ヒメのスピードに圧倒されていた。



「そんなに早くないでしょ。
 普通、普通」


「ま、それだけ飲めば
疲れも吹っ飛ぶだろ」



『よく眠れそうだな』と
フッと鼻で笑うナツメ。



「あ、忘れてた。
終電時間には気を付けないと」



『乗り損ねたら徒歩になる』と
ヒメは腕時計で時間を気にしつつ
それでも片手にはグラスを離さない。


「今日は送ってく」


「!?」



まさか送ってくれるとは思っていなかったため
ナツメの発言に
誘ってくれたとき以上の驚きが隠せない。



「その顔は
 “社長が送ってくれるなんて意外”って
 言いたそうだな」


「まさにその通り…」



まさかココで
“ブラック社長”とは言えず
さらっと笑って誤魔化した。



「でも誘ってくれるなんて
優しところもあるんだね」



一匹オオカミ的なナツメなら
誰かと群れるのを苦手としそうだから
きっとジルヴァラも独りで来たがる。