「…あぁ」


「珍しいね。
 遅刻なんてした事ないのに。
 何かあったの?」


「わかんねぇ…
 けど、なんかイヤな予感がするんだよなぁ」


「何それ…」



ナツメの低く静かな物言いに
シキは神妙な面持ちで
その言葉を聞いていた。



「まぁ来るって言ってたから
 大丈夫だろ。
 そんなに干渉する必要ないと思うし」


「何言ってんだ?
 そんな事言って
 もし何かあったらどうすんの?」



女好きのシキが珍しく
本気で心配しているところを見たナツメは
『意外に彼女に本気なんだ』と感心していた。



それから数十分が経ち…



「遅くなりました!!」



ものすごい勢いで
息切れさせながら
ヒメが到着した。



「あ!ヒメちゃん!
 おはよう~
 大丈夫だった!?」


「へ?」



社長室に入るなり
シキの一声に唖然。


「ヒメちゃんが遅刻だなんて
 きっと何かあったに違いないと思って
 心配したんだよぉ」


「すみません…
 …寝坊です」



さすがにシキにも
ココ数日の出来事は話せない。