「急いでいるので失礼します」
ひたすら無視を続け
男達の間をくぐり抜けようとするも
腕を掴まれてしまった。
「いいから言う事聞きなって。
すぐ終わるから」
「…ッ」
急に態度が変わり豹変した男達。
冷たい表情を浮かべながら
掴む手に力が入って腕に痛みが伴う。
「離せッ」
振り払おうと
何度も引っ張るが
相手の力は増すばかり。
「威勢がいいね。
そんなのも悪くないよ」
本格的に男達の行動に恐怖を感じ始め
もうダメかと諦めかけていた時だった。
「俺のツレに何してくれてんの?」
男達の後ろから聞こえてきた
低く重たい声。
ヒメも含め
男達はその声の主に顔を向けた。
そこに立っていたのは
先ほどまで一緒に合コンをしていた
“若社長”
煙草を吸いながら
めんどくさそうにジロリと睨み付けている。
なかなかの迫力だ。
「…んだよ、男持ちか」
チッと舌打ちした男は
諦めたか掴んでいた腕を離され
その隙にすぐさまヒメから距離を開けた。
「酔っ払っててフラフラしてたから
介抱してあげただけですよ~」
と、白々しい嘘を吐く男。


