秘書室の電気を消し
鍵も掛けると
真っ暗で静かな夜の街中を
一人、駅へと向かう。



すっかり忘れていたのが
今朝の男の事。

まぁ
もともと気にも留めていなかったのだが。



男の行動に違和感を感じ始めたのは
隣に引っ越してきてから
数日が経った頃だった。



「…何コレ?」



仕事帰り
いつものようにポストから郵便物を取り出すと
1番上にあった白い封筒に目が留まった。


宛先も差出人も書かれていない封筒。


部屋に入るなり
封を開けてみると
ハガキほどの大きさの
真っ白な1枚の紙に
パソコンで印字されていた
メッセージ。



その内容に愕然とした。



“初めまして、神崎さん。
 ボクとキミが出会えた事は
運命かもしれません。
 キミの事をもっと知りたい“



「は?何?なんの嫌がらせ?
気持ち悪ッ」



持っている事すら気味が悪くなり
思わず机に放り投げてしまった。



「なんのイタズラ?
 ってか誰?
 なんでアタシの事知ってんの」



自分が知らない間に
得体の知れない相手に
名前を知られ好意を持たれるなんて
考えもしなかった。



もちろんその相手に
心当たりはない。