このアパートは
ほとんど住人同士が関わる事がない。

隣近所と会う事もあまりないためからか
どこに誰が住んでいるかなんて
関心すら持たない人が多い。



「それにしても
荷物多ッ」



引っ越し業者が忙しく荷物を運ぶ中
1人だけ
その部屋の住人らしき男性がいる事に気が付いた。



顔までは見えなかったが
ダボッとした大きめな
上下色が違う黒と灰色のスウェットに
サンダル姿だという事はわかる。



休日だとはいえ
それにしても
ラフすぎる服装だ。


そんな事を思いながら見ていると
男がこちらに気が付いた。



(やばッ)



一瞬だったが目が合ったような気がして
ヒメは咄嗟にドアを閉めて隠れてしまった。


悪い事をしたワケではないのだから
なにも逃げるような事をしなくても良いのにと
わかってはいたが
条件反射は仕方ない。


隣に誰が引っ越して来ようと
この時は関係ないと思っていた。


…“この時”は。




雨の翌朝

燃えるゴミの日のため
傘を差しながら
外にあるごみ収納庫へと向かうが
昨日
隣に引っ越してきた男と鉢合わせした。