「シキ
いいかげんにしろ。
俺の秘書にナンパをするな」



ナイスなタイミングで現れたナツメ。
たぶん本人は空気を読んでるつもりはないが。



「せっかく誘ってたのに
 さすがナツメ
 目を光らせてるなぁ」


「ワケわからん事を言うな。
 会議が始まるんだから
 準備しろよな」



『はいはい』と
シキは軽返事をしながら席に座り
ヒメもホワイトボードを綺麗にしてから
席へと座る。



しかしそんなチャラい副社長だが
他のメンバーも揃い
会議が始まると一変。


さっきまでとは違い
終始真剣な表情で
資料片手に難しい内容を
ひたすら説明している。


幾度となく言い合いもあり
その姿にチャラさは
微塵も感じられない。



あまりのギャップに
本当に同一人物か
まさか二重人格なのかと
目を疑ってしまう。



どうやらシキは
仕事とプライベートのON・OFFを
しっかりし見事に切り離せるベテランで
さすが“副社長”という役職だけあるなと納得。



(意外な才能…?)



兄が社長なのだから
真面目なところが
案外本当のシキなのかもしれない。


…本当に?


どちらにしろ
シキの仕事に対する熱心さと
意外な一面が見られた事に
少しホッとしながら
会議の様子を
ヒメは静かに見ていた。