「でもこんな大手企業を
兄弟でやってるってすごい」
「…そうでもない。
上手くいってるように見えるのは
形だけだ」
「形だけ…?」
「それを考えるのは俺だけでいい」
きっと
苦労や大変さは社長だけにしかわからないように
社員達を守っているんだろう。
「さっき…
アイツに
何か言われた?」
「え?何かって?」
「…いや、別に」
すごく意味深な発言を残し
聞き逃げされるほど
気になる事はない。
「もしかして
聞かれちゃマズイ事でもあるの?」
「まぁ、忘れて」
そうは言われても気になってしまうが
これ以上は深く追究しなかった。
「けれど、とりあえず忠告されたよ。
“社長の元で働くのは至難の業”みたいな?」
いや、実際はそんな言葉は使っていないのだが。
早い話
わかりやすく言えばそういう事だろう。
「は?
なんだそれ」
「社長、スパルタみたいだから。
クビにされないように気を付けないと」
「アイツ、何言ったんだよ。
ったく、何を吹き込まれたの」
イラッとしているナツメに
知らん顔するシキの顔が浮かび
『兄弟だなぁ』と口元がほころぶ。


