「あ、そうだヒメちゃん
 言い忘れてた。
 ウチの社長さん
 自分を追い込むのが好きみたいだから
 体に気を付けてやって」


「はあ…」




「追い込むのが好きって…
 あのなぁ」



ナツメは呆れた様子で
シキの言葉に苦笑した。


これだけ動けるなら
タフなのかと思っていたが
逆に言えば
これだけ動いてしまうから
無理をしているんだろうか。



「ほら、行くぞ」


「あ、うん」


「ヒメちゃん
もしナツメに捨てられたら
俺のところにおいで~
いつでも待ってるよ~」



笑顔でヒラヒラ~と手を振りながら
見送るシキ。


『遠回しのセクハラだ』と
愛想笑いだけ残して軽く会釈した。



「シキ
 お前も仕事に戻れよ」


「俺も仕事に来たんですけどー。
 書類持ってきたし」



さも自分の部屋のようにくつろいでいるが
しっかり目的はあったようだ。



「お前なぁ。
それを先に言えよな。
 ったく、帰ってきたら見るから
 置いとけ」



溜め息を吐くナツメを見ていると
どうやらこの弟の相手は
兄でも難しいらしい。



―――社長専用車内。



「さっきの人
社長の弟さんなんだ」



メガネを掛け
ノートパソコンで仕事をするナツメに
シキの事を聞いてみると。