「え、まさかもう気付いちゃってた?」


「兄弟とは考えてなかったですけど
どこかで見た事あるなとは思ったから…。
 社長に似てるからかって納得」



それに
ナツメを呼び捨てにするやら
アイツ呼ばわりするやら
合鍵まで持っていて
社長室で図々しく居座るのも
すべて辻褄が合った。



「すごい!さすが!
 新しいナツメの秘書は勘が鋭い!」


「…はぁ」



ヒントが多すぎて
だいぶわかりやすいのだが。



「まぁそういうワケで
 “秘書泣かせのナツメ社長”共々
 よろしく頼むね、えーっと…
 そういえば名前はなんだっけ?」


「は、はあ。
 神崎ヒメです…」


「ヒメちゃんって言うの!?
 名前まですっげぇ可愛いんだね!」




この男のペースについていけず
朝から無駄な疲労感。



「さっきから
 人の部屋で何してんだ」



入口から聞き覚えのある声がし
ヒメとシキが同じタイミングで振り返ると
紺のスーツを着たナツメが
ネクタイを緩めながら帰ってきていた。



「よ!ナツメ
 待ってたよ」


「なんでお前がココにいるんだよ。
それにこの部屋は禁煙だ。
 吸うなら喫煙所に行け」


「あいっかわらず冷たいねぇ」



シキは胸ポケットから
携帯灰皿を取り出し
後片付け。