どうやって逃げるか
頭をフル回転させていると
突然、男の携帯のバイブが震えだす。



「最悪。
 電話か…。
 ちょっと待っててね」



男は
『タイミング悪いな』と
ブツブツ言いながら
給湯室から出ていった。


その隙に淹れたコーヒーを持って
速攻、社長室へと戻る。


幸い
その間に出くわす事もなく
ホッと胸を撫で下ろした。




「遅かったな。
大丈夫だったか?」


「お、お待たせ」



社長室に戻り
コーヒーを出すと
ナツメは心配そうに仕事をする手を止めた。



「場所、よくわかったな」


「廊下で社員(らしき人)に聞いたから…
 なんとか」



さっきのナンパ男の事は伏せ
何事もなかったように振る舞い
ヒメは秘書室に戻り
自身に任された資料作成に取り掛かった。







そうして始まった
ナツメ社長の専属秘書という仕事。


これから先ヒメに起こる
さまざまな出会いと真実。

それはまだ本人も知らず
想像もしていなかった。