「あー、それなら案内するよ。
おいで」
若干、胡散臭い気もしたが
さすがに会社内で危ない人はいないだろうと
信じるように努力し
男のあとをついて行った。
到着した先は
社長室からエレベーター間の
通路左側のドア。
案外近かったが
ドアプレートもなかったため
完全に見落としていたらしい。
「ココだったんだ…。
案内して下さって
ありがとうございました」
「いいよ、いいよ。
可愛いコの頼みなら
なんでも聞くよ。
いつでも言って」
キメ顔にウインクしながら
近くに設置されている自動販売機で
カフェオレを買う男。
そしてなぜか
近くのイスに腰掛け
居座り始めた。
「ねぇ、今夜空いてる?
ご飯でも行かない?」
さっき会ったばかりの初対面の相手に
遠慮のない急な誘い。
『誘うためにココにいるのか』と
下心しか見えない。
場所を聞いた相手を間違えたと
本気で後悔した瞬間だった。
「今日は遅くなるんで」
「待ってるよ。
あ、連絡先教えてよ。
終わったら電話して」
携帯を取り出し
なぜか連絡先交換の流れへと発展…。


