かといって
忙しそうなナツメに
聞くほどの事でもない。



「仕方ない。
 探すか」



会社内を探索していれば
途中誰かに出くわすだろうし
聞けるチャンスがあるかと思ったのだが…



「こういうときに限って
 誰も歩いてないなー…」



社員は多いはずなのに
この階の廊下を歩いている人物が
誰1人いない。


それどころか
ほぼ人の気配を感じない。


ヒメ自身のヒールの音だけ
廊下に響きながら
エレベーターに到着。




…と、ちょうどその時。


―――チーン。



エレベーターが止まり
1人の若い男性が降りてきた。




グレーのスーツを着た
無造作な赤毛ヘアーの二重ネコ目なその人物と
目が合う。

どこかで見た事があるような…
ないような。



「え。すげぇめっちゃタイプのコがいる。
 何?新人社員?
どうしてココにいるの?
いつから入ったの?
何歳?」



初対面のくせに
一方的な質問攻めが続き
ヒメは顔が引きつる。



面倒な(特に男は)人物とは
あまり関わりたくない。



「あの
給湯室の場所を探してるんですが」



男の攻めを一切無視し
目的であった質問で返してみた。